Angelic Encounters ビンセントとガブリエル

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エンジェルといえば羽を広げ、空から舞い降りてくる姿を思い浮かべますが、しかし中には人の姿そのままの天使もいるようです。

またメッセージを伝えるため、ある瞬間だけ人の姿を借りて現れる天使もいるのかもしれません。

今回ご紹介するお話は、実に不思議なお話しです。

人の姿をした天使が現れては、瞬時に消える。

そんな天使に何度も助けられたという人の実話です。

主人公はビンセント・タンさん。

シンガポール生まれで、仏教を信仰する家族にて育ちましたが、科学の書物を読書中、聖書を学ぶ会のチラシを見つけます。

その後クリスチャンに改宗、熱心に教えを学びました。

大学を卒業し、科学者として米国にやってきます。

1993年3月25日の事です。

彼は勤め先のラボで一人で残業していました。

仕事がなかなか終わらないため、車を駐車場からラボの出口付近まで移動させておきました。

というのも、数日前から近所で犯罪事件が起きていたからです。

さて午前1時30分に仕事も終わり出口のドアを開けた時に、自分の車の助手席側に誰か見知らぬ人が立っているのに気付きました。

きっと車を盗もうとしているのだろうと思ったビンセントさんは、どうして良いかしばらく悩みましたが、まずは神に祈りました。

「神様、どうぞ私がどうすれば良いか、教えてください。チーサオを使わなければならないでしょうか?」

チーサオとはビンセントさんが得意とする武術です。

彼は身の安全のため、18インチ(約45センチ)の鉄の棒を背中に隠して、少しだけ開けたドアの隙間から顔を出すと、不審な人物に声をかけました。

「何をしてるんですか?」

するとその不審な人物は

「やあ、ビンセント」

と返事をしました。

「私の知っている人ですか?」

と驚くビンセントさんに対して

「いや、そうでもない。」

という返事。

「あなたは誰ですか、名前は?」

そうすると不審な人物は、不思議なことを話始めました。

「私の名前は、あなたが通った最初の学校と、二つ目の学校の名前と同じだよ。」

後にビンセントさんが思い出したのですが、彼が通った二つの学校の名前は「聖ガブリエル」という名前でした。

そしてこの不審な人物は、こうも付け加えました。

「私はあなたの友達だよ。チーサオを使わなくても大丈夫だし、その鉄の棒も使う必要は無いよ。」

彼の声は非常に威厳があり、何よりもこちらが質問する内容をすでに知っているような答えぶりでした。

いよいよビンセントさんは、動揺してしまいました。

というのも、ビンセントさんが得意としている武術チーサオに関しては、生まれ故郷の仲の良い友達でさえ詳しいことは知りませんでしたし、背中に隠していた鉄の棒は、不審な人物からは見えるはずも有りませんでした。

「なぜあなたは、そんな事まで知っているんだ?」

ビンセントさんが驚いて聞き返すと、

「知ってるからさ。」

と応え、そして

「ところで、あなたのお母さんは大丈夫だからね。」

と続けました。

実は1週間前、彼の妹がシンガポールから電話をしてきて、母親の心臓の状況があまり思わしくないことを聞いていたため、非常に心配していました。

ガブリエルは続けました。

「あなたは神を信じ、そして愛していますね。」

「ああ、とても。」

ビンセントは応えました。

「神もあなたのことを大変愛していますよ。そして神はもうすぐやってきますよ。」

ガブリエルは「もうすぐ」という部分を非常に強調しました。

「それは素晴らしい!」

ビンセントは応えました。

ガブリエルはその後、水を少し飲ませて欲しいと頼みました。

おなじクリスチャンであることを認識したビンセントはすっかりと安心し、

「もちろん」

と応えると、ラボの中に入りました。

しかし、考えてみれば一緒に来てもらったほうが良いだろうと思い直し、振り向きました。

この間、ほんの3秒ほどの一瞬のことでした。

が、その時にはすでに、ガブリエルの姿はどこにもありませんでした。

バニッシュという言葉がぴったりするように、空気中に消えてしまったような感じでした。

彼は、驚きました。

どこにもガブリエルと名乗る人物の隠れる場所など無かったからです。

少し怖くなったビンセントは、ドアの前に鉄の棒を投げ捨てると、車に乗り込み一直線に自宅へと走りました。

翌日、3月26日。

ラボに帰ってくると、ドアの前に昨日の鉄の棒があるかどうか、確認しました。

科学者として、昨日のことが夢なのか、本当のことなのかどうしても確かめられずにいられなかったのです。

鉄の棒は、昨日のままの状態でドアの前に落ちていました。

彼はラボの洗面所に行くと、鏡の前にへたり込みました。

そして手を合わせると、一心に神に祈りました。

「神様、私はどうすれば良いのですか。昨夜起きたことは事実であるのは間違いありません。」

「私はこの事を人に伝えなければならないのですか。」

「そうであれば、まずは私自身が昨夜のことを信じなければなりません。」

彼はコンピューターの前に座ると、昨夜の出来事を忘れないうちに、全て記録しておくことにしました。

その日の夜のこと。

彼は前日のガブリエルと名乗る人物との出会い、そして全ての会話内容をはっきりとした夢で見ました。

朝の3時30分に急に目覚めたビンセントは、夢で見たガブリエルの容姿、そしてやり取りした会話の一字一句を書き取りました。

この内容は、ラボで記述した内容とまったく同じものでした。

1週間後、ビンセントは彼の母親が心臓の手術を行い、それが非常に良い結果に終わったことを知ります。

後ほど、さらに詳しい情報が届くのですが、その手術に関しての決定を行った時間というのは、くしくもガブリエルがビンセントに

「母親は大丈夫だよ。」

と伝えた同じ時刻だったとのことです。

ビンセントさんは、この後も人の姿をしたエンジェルに出会い続けます。

つづく